結ばれない二人 ギュスターヴとレスリー

とうとう一緒になることはなかった2人。

互いに想い合いながらも結ばれなかった理由と、どうしたら結ばれていたかについて考察します。

2人の出会い

2人が出会ったのは、ギュスターヴが南大陸のグリューゲルに亡命して間もないころ。

ギュスターヴが7歳、レスリーが6歳のころでした。

当時のギュスターヴは、追放された事実を受け止められず、乱暴者として有名になってしまっていたことから、レスリーもギュスターヴを敬遠していました。

しかし、時間の経過とともにレスリーはギュスターヴの本質に気づき始め、彼に意見することができる存在になっていました。

泣きながらフリンをいじめるギュスターヴ

ある日、日々のやるせなさから小鳥や草花に八つ当たりをしているところを母ソフィーに見つかったギュスターヴは、隠れてフリンをいじめ始めます。

そこに偶然居合わせたレスリーは、見かねてギュスターヴに詰め寄ります。思わず声を荒げるギュスターヴですが、その眼には涙がありました。

涙を見られたギュスターヴは、思わずその場から逃げ出します。

レスリーはフリンに対しても、殴られてばかりいないでしっかりしろと嗜めます。しかしフリンは、「僕のことをわかってくれるのはギュス様しかいないから」と言って、すぐにギュスターヴを追いかけていきます。

裕福な商家の娘として何不自由ない生活を送っていたレスリーにとって、ギュスターヴとフリンのいびつな関係に始めこそ戸惑いがありましたが、レスリーは徐々に彼らの意識を理解していくようになります。

再会

ギュスターヴがヤーデへ移住してから3年後、ヤーデ伯が開くパーティに参加したギュスターヴは、そこで声をかけた「かわいい女の子」が行儀見習いとしてヤーデ伯に来ていたレスリーであることに気づきます。

レスリーを「かわいい」と思って声をかけてしまった気恥ずかしさからか、ギュスターヴは昔と変わらない幼稚な言動を繰り返します。3年の月日は、互いを異性として魅力的に成長させていたようです。

レスリーにとっても、鍛冶技術によって自分にできることを見つけ、新しい人生を歩み始めたギュスターヴは、3年前の自暴自棄であったギュスターヴとは違った印象を与えていたはずです。

母の死

ギュスターヴの母ソフィーは、流行病により病床に伏せるようになります。

レスリーは敬慕するソフィーの看護を申し出て、実家ベーリング家の許可を得て、ギュスターヴの屋敷へ移り住んでいました。

甲斐甲斐しくソフィーの世話をするレスリーは、ソフィーにギュスターヴのことを託されます。その言葉どおり、レスリーはその後もギュスターヴの行く先々に付き添い、友人として、良き相談役として彼を支え続けることになります。

東大陸出兵

計略によりワイドを奪取したギュスターヴは、ギュスターヴ12世の急逝により、突如としてフィニー王国の継承権争いに名を連ねることになります。

ギュスターヴ自身は継承権の主張に乗り気ではありませんでしたが、家臣たちからは継承権主張を強く勧められます。

ギュスターヴはレスリーにも意見を求めますが、レスリーの返事は「したいようにすればいい」といったものでした。

ギュスターヴは社会的弱者である術不能者の地位向上などを目指しており、フィニー王国を継承することは、間違いなく術至上主義打破の大きな力になるはずです。その中でギュスターヴが東大陸出兵に消極的だったのは、術不能者としての劣等感や、自らが周囲の者に不幸をもたらしてしまうのではないかという不安からです。

ギュスターヴはレスリーに意見を聞いた後、東大陸出兵を決意することから、「したいようにすればいい」という言葉には、ギュスターヴの夢を後押しする気持ちがこもっていたのかもしれません。

一方で、「君はついてくるのか?」という言葉には、「どうしようかな。」と自分の立場をはっきりさせませんでした。これには、レスリーの「自分がギュスターヴの負担になってはいけない」という気持ちが表れているのかもしれません。

兄弟再会

継承権争いに勝利したギュスターヴは、弟フィリップの部屋で引き裂かれた家族の肖像画を発見します。「自分なんかが生まれたせいで」と自らを責める言葉を漏らすギュスターヴに、レスリーは「そんなことを言わないで」と泣きつきます。自分がここにいるのはギュスターヴがいたから。自らの気持ちに蓋をしていたはずのレスリーが、唯一本心を漏らした瞬間でした。

ギュスターヴも「君はいつも俺を救ってくれる」と本心を打ち明けますが、レスリーは再度自分の気持ちを抑え、「私は救われない」と突き放してしまいます。

以降も二人は結ばれることはありませんでしたが、レスリーは良き友としてギュスターヴに付き従い続けることになります。

どうすれば結ばれることができたか?

成長とともにお互いを想いあうようになっていった二人。しかし、術不能者であるギュスターヴは、「もし二人の間に生まれた子供が術を使えなかったら」という不安が常に心の中にあり、レスリーもその気持ちを理解していました。

また、フィニー王国という十字架を背負ったギュスターヴと表立った関係を持てば、それは政治的に利用されかねず、ギュスターヴの意志を曇らせることになりかねません。術至上主義の打破のために、多くの敵を作ることになるギュスターヴの負担にならないためにも、レスリーは自らの気持ちに蓋をすることになります。

二人が結ばれるには、ギュスターヴ帝国が確固たる地位を築き、術不能者でも安心して暮らせる世界を早期に作るしかなかったように思います。それが二人の間にあった障害を打ち消してくれるはずだからです。

しかし、それもうまくはいきませんでした。フィニー王国の安定のためにはファイアブランドを継承する王が必要でしたが、継承者となるはずのフィリップ2世は何者かに暗殺されてしまいます。フィニー王家を継承できるのは、ケルヴィンとマリー夫妻の子供だけであり、継承にはヤーデ伯のナ国家臣としての立場が障壁になります。ギュスターヴ帝国はナ国と渡り合えるほど強固な地盤固めを強いられ、無理な南下政策は結果としてギュスターヴの死を招くことになり、その後覇権を握ったカンタールにより、東大陸は再び術至上主義に逆戻りすることになります。

レスリーやムートンからの忠告も聞かず、ギュスターヴが強硬に南下政策を推し進めていたのは、もしかしたらレスリーと結ばれるためだったのかもしれませんね。